マクロ解析とミクロ解析 -GA(ユニバーサルアナリティクス)での解析-

Google Analyticsなどのアクセス解析では主として,ある期間にウェブサイトに訪れたユーザーの数やセッションの回数などの集計したデータを見てその傾向を把握するために使われます.そのような解析を「マクロ解析」と呼びます.一方で近年は,個別のユーザーに焦点を当てそのユーザーのサイト内での行動(どのページをどれぐらい見ていたかなど)のデータ,つまり非集計のデータをマーケティングに利用しようとする動きが技術の進歩と共に加速しています.このような解析を「ミクロ解析」と呼びます.

 

ミクロ解析が必要不可欠になっている

B2BやB2Cでも共に,大手企業は自分たちが持つ顧客データとその顧客のウェブサイトでの行動データを結びつけ,顧客が何に興味があり何を欲しているか,そしてそのタイミングはいつかを分析し,それをウェブサイト上や実社会(営業)でも活用して始めています.つまり,ミクロ解析のデータを活用しているのです.

ただ,そのような判断をするために集めた膨大なデータ(ビックデータ)をフル活用してきめ細かく対応するのは人間では無理なので,データマネージメントプラットフォーム(DMP)やマーケティングオートメーション(MA)やアカウントベースドマーケティング(ABM)や人工知能(機械学習)を活用していこうというのが昨今だと思います.

とわいえ,人工知能が話題になっていても導入すれば自動的に最適化してくれるなんて夢のまた夢で,ツールを使いこなすのも簡単ではなく,さらには金銭面的にも導入のハードは高いと思います.ですが,やっている企業はどんどん先を行く状況で競争が進んでいます.

DMPやMAやABMや人工知能に関してもとにかく活用するにはデータが必要です(マーケティング関係のフォーラムでのこの手の講演でもデータの重要性が強調されます).データなら何でも良いというわけではなく,データの質が求められます.

そして,よりよいサービス・価値を提供するには,マクロ解析のためのデータでは不十分で,ミクロ解析のためのデータが必要不可欠であるというのが現状です.

 

Google Analytics(ユニバーサルアナリティクス)の基本はマクロ解析

マクロ解析では,例えばGoogle Analyticsの「集客 > すべてのトラフィック > チャネル(図1参照)」などで表示されるセッション新規セッション率,新規ユーザー,直帰率,平均セッション時間,コンバージョン率などが主な解析指標になります.これらは,例えば広告から流入したユーザーが今月はXXXでその中でコンバージョンに至ったのはYとか,まさにある条件にあてはまるユーザーを集計したものから得られる値です.

このようなデータはもちろんウェブサイトの改善に役立つデータですが,あくまでも全体としての傾向がわかるだけです.コンバージョンしたユーザーにサイトのどの部分が刺さったのかの傾向はわかっても,どうしてそうなのかを推測するはかなり難しいです(データでユーザーの気持ちや考えはもちろんわかりませんが,個々のユーザーの詳しい情報があると「気づき」となるポイントが増えるので,ユーザーの気持ちや考えを推測しやすくなり,仮説が立てやすくもなります.仮説が立てられると,どのような施策をすべきかなどのアイデアが出やすくなり,それによりPDCAのサイクルをまわしてサイトを改善できる可能性が高まります).

図1.Google Analytics(ユニバーサルアナリティクス)のすべてのトラフィックレポート

図1.Google Analytics(ユニバーサルアナリティクス)のすべてのトラフィックレポート

Google Analytics(ユニバーサルアナリティクス)のミクロ解析のための機能

Googleは当然このようなミクロ解析的視点を重要視したマーケティングの潮流がわかっています.ですから,ミクロ解析なデータと言えるものとしてGoogle Analytics内でも「ユーザー > ユーザーエクスプローラ > ユーザーレポート(図2参照)」で,クライアントIDという個別のユーザーを判別できるIDを軸としたデータ(個別ユーザーのサイト内での行動履歴)が確認できる機能が存在します.ただし,正確にはクライアントIDはブラウザに紐付くクッキーなので,同一のユーザーが複数のブラウザで同じサイトにアクセスした場合や,一つのブラウザを多数の人が遣っている場合などでのユーザーの判別は当然できません.

なお,ミクロ解析での主な指標は,サイトへ流入してくるユーザーの所属先(企業や地域),流入・閲覧履歴(コンバージョンに至ったユーザーがどのような流入でサイト内のページをどのような順序で閲覧したか),訪問回数・日時などです.

ですが,Google Analyticのこのデフォルト機能(ユーザーエクスプローラ)だけでは活用は難しいというのが感想です.データをダウンロードできるのですが,JSON形のためローカル環境のExcelで編集とかして・・・などとは気楽にできません.

なお,アクセス解析などで著名な小川卓さんや木田和廣さんのGoogle Analytics関連のセミナーでもかならず,Google Analyticsのユーザーエクスプローラの活用を推奨する話があるのを確認しています.ただ,活用は推奨するのですが,必ずTableauのようなけっこう高額な(SaaSの)有料ツールを使った話になったりします(もちろんGoogle Analyticsのみでの活用の話もありますが,ちゃんと活用するとTableauを使って・・・という感じで話をしていました).

図2.Google Analytics(ユニバーサルアナリティクス)のユーザーエクスプローラのユーザーレポート

図2.Google Analytics(ユニバーサルアナリティクス)のユーザーエクスプローラのユーザーレポート

Google Analytics(ユニバーサルアナリティクス)をカスタマイズしてミクロ解析を始めよう

UXユーザーエクスペリエンス:ユーザーにウェブサイトなどの操作体験)を高める,さらにはCXカスタマーエクスペリエンス:ユーザーへの認知からコンバージョンまでの一連の中であらゆる体験)を高めるためにはミクロ解析は今後ますます重要になると思います.

なぜなら,個別のユーザーの行動を分析し,心理を推測し,事業の課題に合わせてサイトを最適化することで,ユーザーの満足度を上げることがミクロ解析の目的だからです.

DMPやMAやABMや人工知能(機械学習)などがなくても,ミクロ解析でサイトを改善をする施策を行ってCXを向上させることは可能です.

そのためにはGoogle Analyticsをカスタマイズして,少しでも有用なデータを早く取得することを推奨します.

その方法やアイデアなどを

GA(ユニバーサルアナリティクス)で個々のユーザーのサイト内の行動を追う

データポータルで「GAのユーザーエクスプローラより便利な(?)ユーザーレポート」を作ってみた

ExcelでGoogle Analyticsのデータを使いユーザーレポート(行動履歴レポート)を作ってみた

にて紹介しています.

上記では,Google Analytics(ユニバーサルアナリティクス)とGoogleタグマネージャーとデータポータルを活用することで,ミクロ解析が高額なツールを導入することなくできるためのエッセンスを書いたつもりです.有料ツールですがすでに多くの人に使われているExcelを追加で活用する方法も書いています.

なお,ミクロ解析の対象とするユーザーは,基本はコンバージョンしたユーザーとなります.決め打ち(最初から目的がはっきりしていて一直線にコンバージョンした)のユーザーもいると思いますが,サイトを巡回して時間をかけてコンバージョンしたユーザーなどの行動履歴を見てユーザーの心理を推測すると意外な発見があるかもしれません.

コンバージョンしたユーザーが極端に少ないなら,コンバージョンしたユーザーとコンバージョンの手前までユーザー(フォームに到達したがけっきょく登録・お問い合わせをしなかったユーザー)の行動履歴を比べてみると,コンバージョンをしなかった人に届いていなかったコンテンツなどがわかるかもしれません(誘導がうまくいってない箇所がみつかるかもしれません).

ともかく一日でも早く設定をしてデータを蓄積することを推奨します.