広告ブロック(アドブロック)のプラグインを有効にしているブラウザを使ってGoogle Analyticsの設定検証作業をしているとき,Google Analyticsでアクセスが計測できていないことに気づきました.そのことを紹介します.
目次
1.インターネットマーケティングとCookie
電通の調査によると,日本でも2019年にインターネット広告費がTV広告費を超えたそうです.インターネット広告(インターネットマーケティング)においてブラウザのCookieが重要な役割を果たしています.ただあまりにもCookieが利用され個人のプライバシーの問題も注目されるようになりました.それに伴いAppleはSafariのITP (Intelligent Tracking Prevention)による対策が進み,そしてブラウザで一番のシェアを持つGoogle ChromeでもCookieを廃止するとの発表がありました.
Google による Cookie 廃止、「2年間」の猶予に歓迎の声 :「実に穏やかなアプローチだ」
https://digiday.jp/platforms/google-plans-kill-off-third-party-cookies-chrome-within-2-years/
ただ,ChromeのこのCookie廃止は広告目的のCookieが対象で,それはサードパーティクッキー(3rd Party Cookie)と呼ばれるものです.Google Analyticsでもユーザーのアクセスを計測するためにCookieを使っていますが,こちらはファーストパーティクッキー(1st Party Cookie)と呼ばれるものに該当します.
ファーストパーティクッキーとサードパーティクッキーの違いに関しては,例えば以下のサイトを参照してください.
サードパーティクッキーって何だっけ? 今さら聞けないHTTP Cookieのキホン
ちなみに,AppleのITPはファーストパーティクッキーも制限対象にしています.現在(ITP2.3)は,ファーストパーティクッキーは1日間有効ですが,将来はそれもなくして完全に使えなくするということです.
2.広告ブロック(AdBlock)
上記に書いたようにCookieの制限がGoogleやAppleなどのいわゆるプラットフォーマーによっても進んでいるのですが,それを待つのではなく余分なCookieを防ぎたいと考える人もいると思います.そのような場合,現状でも自分でブラウザの設定などでCookie制限することができます(使用しているブラウザのセキュリティーなどの設定でCookieを制限するように変更すればいいわけです).ですがあまりこのブラウザ設定でCookieを制限するとブラウザの使い勝手が悪くなったりします.
なるべく使い勝手を悪くしないで「広告に使われるCookieを防ぎたい」と考える人にとって一つの手段になるのが広告ブロック(アドブロック)などのブラウザのプラグイン(アドオン,拡張機能)です.広告ブロック(アドブロック)ですから,当然「鬱陶しい広告の表示を減らしたい」や「スマホでの広告による通信料を減らしたい」と考える人もこのツールを使っていると思います.
さて,この広告ブロックですが広告をブロックすることが目的ですから,サードパーティクッキーを防ぐ(拒否する)ことになると思います.ですが,ちょっとした設定でファースパーティクッキーも防がれてしまうようです.つまり,Google Analyticsのクッキーも防がれてアクセス自体が計測出来なくなります.
私が使っていた広告ブロック(アドブロック)は「AdblockPlus」というプラグインです.このプライグイン「AdblockPlus」をインストールしてちょっとした追加設定をすると,Google Analyticsでアクセス自体が計測できなくなります.
図1は,「AdblockPlus」の設定画面です.デフォルトでは「プライバシー&セキュリティー」の項目の「トラッキングの追加ブロック」は無効ですが(チェックがされていませんが),この「トラッキングの追加ブロック」を有効にした状態(図2参照)のブラウザを使うとGoogle Analyticsでアクセス自体が計測されなくなります.
ちなみに「トラッキングの追加ブロック」を有効にすると,「訪問したウェブサイトでのオンライン活動が追跡される可能性がある既知の団体からプライバシーを保護します。」と書かれています.ちょっとわかりにくいですが,ファースパーティクッキーのうち追跡するようなものは防ぐと言うことでしょうか(ただし,ログインなどで保存してあったクッキーなどは消されずにそのまま使えます).
図3が「AdblockPlus」をOFFにした状態でテストサイトにアクセスした状態です.図4のようにプラグイン「Google Tag Assistant」で,Google AnalyticsとGoogleタブマネージャーが有効なのが確認できます(gtag.jsをサイトに直貼り,Googleタグマネージャーでユニバーサルアナリティクスを実装しています).図5が「トラッキングの追加ブロック」を有効にした「AdblockPlus」をONにした状態です.図6のように2つのGoogle Analyticsは完全にエラー状態です.
3.広告ブロックによる計測影響は?
このように広告ブロック機能(追加の設定をしてる場合だけと思いますが)が使われているブラウザを使ったサイトのアクセスは計測出来ないわけですから,それが実際にどれぐらいあるかはGoogle Analyticsでわかりません.私の勝手な推測を書くならばこのような計測出来ていないアクセスはそれなりにあると思っています.理由は,ある登録をするサイトでの計測結果を調べていたことがあるのですが,Google Analyticsでのアクセス履歴がないのに登録をした人がたまにいたからです.
サイト運用者などのためのGoogle Analyticsにアクセス履歴を残さないためのプラグイン「Google アナリティクス オプトアウト アドオン」をインストールして有効にしているブラウザを使った場合や,ブラウザの設定でクッキーを完全に拒否するなどしても当然Google Analyticsでのアクセス履歴が残らないのですが,登録者の属性からそのようなことをするだろうか?と思っていました.今回,広告ブロックのツールによってもその設定によって,Google Analyticsでのアクセス履歴が残らない(計測されない)とわかって,そのときのGoogle Analyticsでのアクセス履歴がなかった登録者は広告ブロックのブラグインをいれたブラウザを使っていたのではなかいと思ったからです(そのほうがより現実的だと感じました).このような記事を書いていてなんですが,広告ブロックをしたいと感じるほうが自然だと思うほど昨今の広告は鬱陶しいことが多いので(笑).
このようなアクセスの計測が出来ないユーザーに関して対策は出来ないのですから,そのことをあまり気にしてもしかたないと思います.ですが,このような計測されてないユーザーもそこそこいるかもしれないと頭の隅にとどめていていいても損はないと思います.
補足
Cookie規制に関するまとまった記事があったので紹介しておきます.
Google Chromeの「サードパーティCookie終了」まで後1年半。マーケターがとるべき対応とは?
<追記:2020年12月>
GoogleがChromeに搭載しようとしている広告ブロック関連の機能は,今回紹介したAdBlock Plusの開発陣と進めているようです.
GoogleがChromeの広告ブロックの新方式「マニフェスト V3」を正式発表、拡張機能やPWAの改善などの新情報も
https://gigazine.net/news/20201210-chrome-manifest-v3-chrome-extensions-pwa/