昨今,何かしらの生成AIサービスに関するニュースを毎日聞きます.特に2024年後半からは,リアルタイムのネット検索(Web検索)機能が各生成AIサービスに組み込まれて,その影響が日本でも反映されるようになってきたと思います.本サイトでもその影響を感じたのでそれを紹介します.
目次
1.はじめに
生成AIサービスに紐付くネット検索機能の影響は,とくに教育関連のサイトで顕著に出ているという記事をどこかで読んだことがありましたが,最近だとGigazineにて下記のような記事を見かけました.
Google検索に「AIによる概要」が表示されるようになったせいでウェブサイトのトラフィックが急減したとの報道
https://gigazine.net/news/20250408-google-ai-search-websites-traffic-plunge/
この記事は,生成AIサービスのネット検索機能そのものというわけではなく,Googleのネット検索結果として上部に表示される「AIによる概要(図1の赤枠内参照)」の影響にフォーカスしたものですが,英語圏ではこのように生成AIサービスに紐付くネット検索機能などの影響がいまの日本よりもはるかに大きいのだろうとはわかります.もちろん上記のGigazineの記事の元ネタ
Google AI Search Shift Leaves Website Makers Feeling ‘Betrayed’ – Bloomberg
などにも確固たる証拠があるとは言えないところもあり,推測も含まれているとは思いますが.

図1.Google検索で表示されるAIによる概要の例.
ですが,本サイトでも生成AIサービスに紐付くネット検索機能の影響を計測しています.記事「生成AIサービスからのアクセスとGA4の計測」でも紹介しましたが,本サイトにおけるGA4で計測した生成AIサービスのネット検索機能の結果からの流入と思われるセッションの「セッションの参照元 / メディア」の値,
- 「chatgpt.com / referral」:ChatGPT( https://chatgpt.com/ )
- 「gemini.google.com / referral」:GoogleのGemini( https://gemini.google.com/?hl=ja )
- 「perplexity.ai / referral」:Perplexity( https://www.perplexity.ai/ )
- 「felo.ai / referral」:日本発の AIスタートアップ企業Sparticle社のAI検索エンジンFelo( https://felo.ai/ja/search )
からの流入セッションを,Looker Studioで集めたグラフが図2です.図2で示したように,これら4つのサービスからの流入セッションは,2025年3月には過去最高になって上昇トレンドだと見て取れます(記事「生成AIサービスからのアクセスとGA4の計測」で書いたように,2024年7月から生成AIサービスからのアクセスがあったことを計測しています).
これら流入の元となった生成AIの表示内容(それを表示させた質問内容)はもちろんわかりませんが,これらセッションにランディングページの情報を紐付けてみると,大半が「GA4(Google Analytics 4)」と「Looker Studio」に関連した内容だったのだろうと推測できました.
そこで,本サイトのGA4とLooker Studio関連の記事の自然検索(オーガニック検索)の変化と,Search Consoleの関連するデータなどを少し調べてみました.

図2.本サイトの生成AIサービスのネット検索機能の結果からの流入と思われるセッションの動向.
2.Google Trendsでのキーワード「GA4」と「Looker Studio」の動向
まず,Google検索においてキーワード「GA4」と「Looker Studio」の検索が過去12か月間(2024年4月~2025年3月)でどのような動向だったかを,Google Trendsで確認してみました.
図3がキーワード「GA4」の検索の人気度の動向です.「GA4」は明らかにボリュームが下降トレンドだったと思います(昨年の前半にくらべて明らかに検索されることが減っています)が,最近は一定のボリュームの幅に落ち着いてきたように見えます.

図3.2024年4月~2025年3月のキーワード「GA4」の検索の人気度の動向.
図4がキーワード「Looker Studio」の検索の人気度の動向です.「Looker Studio」は過去12か月間(2024年4月~2025年3月)で,その検索ボリュームはほぼ変わりなく,「GA4」のような下降トレンドはなかったように見えます.

図4.2024年4月~2025年3月のキーワード「Looker Studio」の検索の人気度の動向.
3.Search Consoleでのキーワード「GA4」と「Looker Studio」の各指標の動向
図5は,本サイトのSearch Consoleでの検索キーワードに「GA4」が含まれている場合の平均掲載順位の過去1年間の動向です(具体的な数値はぼかしていますので,グラフの推移に注目してください).本サイトの更新自体が近年は多くないので平均掲載順位が下降や停滞している感じですが,今年の1月に一部の記事をリライトした影響が反映され平均掲載順位が少し上昇したと考えています.

図5.本サイトのSearch Consoleでの検索キーワードに「GA4」が含まれている場合の平均掲載順位の過去1年間の動向.
図6は,本サイトのSearch Consoleでの検索キーワードに「GA4」が含まれている場合の平均掲載順位と合計表示回数の過去12か月間(2024年4月~2025年4月)の動向です.今年に入って,平均掲載順位が上昇したのに,表示回数は明らかに減少していると言っていいと思います.図6の内容は掲載順位が平均でかつ多数のページが対象なのでわかりにくい面もあります(ワザとこの図を使っている面もあります)が,もう少し限定した個別のキーワードや個別のページのデータを見ても,平均掲載順位は改善して上昇したのに表示回数が下がっていることを確認しています.

図6.本サイトのSearch Consoleでの検索キーワードに「GA4」が含まれている場合の平均掲載順位と合計表示回数の過去12か月間(2024年4月~2025年4月)の動向.
図7は,本サイトのSearch Consoleでの検索キーワードに「GA4」が含まれている場合の平均掲載順位と合計クリック数の過去12か月間(2024年4月~2025年4月)の動向です.こちらも今年に入って,平均掲載順位が上昇したのに,合計クリック数が減っているように見えます.

図7.本サイトのSearch Consoleでの検索キーワードに「GA4」が含まれている場合の平均掲載順位と合計クリック数の過去12か月間(2024年4月~2025年4月)の動向.
図8は,本サイトのSearch Consoleでの検索キーワードに「GA4」が含まれている場合の平均掲載順位と平均CTRの過去12か月間(2024年4月~2025年4月)です.図7で見たように合計クリック数は今年に入り減少しているように感じましたが,それよりも表示回数の減り方のほうが大きかったため,今年に入ってからの平均CTRは上がっているように見えます.

図8.本サイトのSearch Consoleでの検索キーワードに「GA4」が含まれている場合の平均掲載順位と平均CTRの過去12か月間(2024年4月~2025年4月)の動向.
キーワード「GA4」の検索の人気度の動向(図3)と,本サイトにおけるキーワード「GA4」に関連するSearch Consoleの結果(図6~8)と,生成AIサービスからの流入の増加(図2)のデータを見ていると,「GA4」というキーワードに関連したネット検索行為が生成AIサービスに奪われている(Googleなどのサイトを使ったネット検索から生成AIサービスを使ったネット検索をする人が増えた)のではないかと感じました.
もちろん,図3のキーワード「GA4」の検索の人気度の動向でボリュームが減ったのは,生成AIサービスの影響だけでなく,「GA4」というキーワード自体が以前より注目されなくなりネット検索される回数が減った可能性もあります.
それでは,検索キーワード「Looker Studio」の場合ならどうでしょうか.図4で示したようにその検索ボリュームは,過去12か月間(2024年4月~2025年3月)ほぼ変わりないように見えます.上記の「GA4」の場合と同様に,本サイトでのSearch Consoleで検索キーワードに「Looker Studio」(の関連用語)が含まれている場合の動向を確認してみました.
図9は,本サイトのSearch Consoleでの検索キーワードに「looker」が含まれている場合の平均掲載順位と合計表示回数の過去12か月間(2024年4月~2025年4月)の動向です.今年に入って,平均掲載順位は維持もしくは上がり気味なのに,表示回数は明らかに減っています.

図9.本サイトのSearch Consoleでの検索キーワードに「looker」が含まれている場合の平均掲載順位と合計表示回数の過去12か月間(2024年4月~2025年4月)の動向.
図10は,本サイトのSearch Consoleでの検索キーワードに「looker」が含まれている場合の平均掲載順位と合計クリック数の過去12か月間(2024年4月~2025年4月)の動向です.こちらも今年に入って,平均掲載順位は維持もしくは上がり気味なのに,合計クリック数が減っているように見えます(クリック数が減っているのは,もしかしたら同じ人が何度も同様なキーワードで検索していて,すでに本サイトの記事を知っているからクリックしなかったようなこともありそうだとは思いました).

図10.本サイトのSearch Consoleでの検索キーワードに「looker」が含まれている場合の平均掲載順位と合計クリック数の過去12か月間(2024年4月~2025年4月)の動向.
Google Trendsでは「Looker Studio」の検索ボリュームはそれほど変化ないように見えましたが,本サイトでの表示回数はかなり減っているのが気になります.この計測期間で,本サイトではLooker Studio関連記事の増減はとくになく,平均順位の低下もそれほどあるように思えません.平均順位が低下していて表示回数が減少しているのならわかるのですが・・・.この表示回数の減少の原因は,いまのところよくわかりませんでした(もちろん,生成AIサービスからの流入が増えているので,その影響はあると思いますが,本当にそれだけかは不明です).
4.GA4での自然検索での「GA4」と「Looker Studio」に関連するセッションの動向と考察
Search Consoleのデータを見ると「GA4」と「Looker Studio」に関しては平均掲載順位が変化していないのに,記事が表示される機会そのものが減っている(それらキーワードのネット検索自体が減っている)のは確かなようです.この表示回数の減少は,やはり生成AIサービスの影響があるだろうと考えるのはあながち間違いではないと思います.実際に,それらキーワードに関連したと思われる生成AIサービスからの流入が増えていますから(図2参照).
図11は,2024年6月から2025年4月上旬の本サイトのGA4の計測において,セッションのメディアが「自然検索」で,ランディングページが「GA4」と「Looker Studio」に関連すると思われるセッションを集めたグラフです.生成AIサービスからの流入がGA4で計測され始めた2024年7月以降はほぼ下降トレンドだと感じるのは,偶然ではない気がします.

図11.2024年6月から2025年4月上旬の本サイトのGA4の計測でセッションのメディアが自然検索でランディングページが「GA4」と「Looker Studio」に関連すると思われるセッションの動向.
なお,図2と図11では具体的なセッション数を消していますが,
「図2の生成AIサービスからの流入もセッションの増加数」は「図11の自然検索からのセッションの減少数」よりもはるかに少ない
ことを加えて述べておきます.
SEOを生業としている人やWebサイトへの集客でSEO(コンテンツ作成)に力を入れている企業の観点からすると,上記のような現状は好ましくないはずです.なぜなら,ユーザーが検索をするプラットフォームが生成AIサービスになるほど自分のサイトへの流入が減る可能性が高いからです.生成AIサービスの提示した結果で満足した場合では,例え生成AIサービスの結果に情報源として自分のサイトが提示されていても,ユーザーの大半はそれら情報源を確認しないと思います.
そして,各生成AIサービスが,どのような質問に対して,どのような基準で結果(返答)に自分のサイトの内容を採用させるのか,採用した場合はどのように表示しているのかなどの情報が現状は一切不明です(記事「生成AIサービスからのアクセスとGA4の計測」で書いたような方法である程度推測はできることもありますが,生成AIサービスからSearch Consoleのようなツールが提供されることはありえるでしょうか?その可能性は低い気がします).
現状の生成AIが結果として表示する内容はテキストベースですから,テキスト(テーブル形式も含む)だけの説明で解決できる内容だと,生成AIサービスがユーザーに示した結果に情報源としてサイトのリンクが提示されていたとしても,大半はそのリンクをクリックしてくれていない可能性がより高まると思います.
一方で,テキストだけではわかりにくい場合などは多々あります.本サイトのように「GA4」や「Looker Studio」に関連するものの内容(説明)はテキストだけでも不可能ではないですが,図があるのとないのとでは人が理解するためのしやすさに差が生じる場合があります.したがって,そのような差がある場合は,情報源をたどってサイトを訪問してくれる機会が現状まだ高そうだと期待します.ただ,日本で「GA4」や「Looker Studio」などを検索するユーザー層は,それこそ生成AIサービスの利用を積極的に進めているユーザー層ともかなりかぶると思われます.ですから,「GA4」や「Looker Studio」などの生成AIサービスのネット検索機能と親和性が高い分野(Web上に情報があふれていている分野)でかつユーザーも生成AIサービスを積極的に利用している場合,今後より顕著にWebでの検索ボリュームの低下が進む可能性もありそうです.
5.おわりに
今後,検索をするプラットフォームとして生成AIサービスを使う人が増えていっても,当分の間はテキストだけではわかりにくい場合や伝えきれない場合などは,生成された結果に紐付く情報源のリンクが活用されてユーザーが自分のサイトを訪れてくれる機会はそれなりにありそうだと期待はしています.ですが,生成AIの発展具合によっては,そのような情報源としての流入自体もほぼなくなる日がきそうだと感じます.
検索という行為そのものが大きく変化する時期が近づいてきていると,このような小さなサイトからも感じられるという結論に至ったわけですが,皆さんの環境ではどうでしょうか.