「アトリビューション」について考えてみる・その3

その1その2に引き続き,Google Analyticsを使ってアトリビューションを考えます.今回は,Google Analyticsの[コンバージョン > アトリビューション]内のモデル比較ツールの機能と,その問題点などを紹介します.

 

1Google Analyticsのアトリビューションのモデル比較ツール

Google Analyticsの[コンバージョン > アトリビューション > モデル比較ツール]を選択すると,図1のようなレポートが表示されます.ルックバックウィンドウなどの機能は,すでに紹介した[コンバージョン > マルチチャネル]のものと同じです.

ここではコンバージョンを分配するモデルを軸に,各チャネル(キャンペーン等も選べます)の貢献度(アトリビューションスコア)を集計し比較できます.

モデル比較ツール」のレポートは,図1のように普段グラフなどが表示される箇所に「終点」というアイコン(図1の緑色の枠を参照)があり,下記には表があります.これは「終点モデル」と呼ばれるアトリビューションモデルを選択している状態で,その終点モデルに関するコンバージョン数(この値を区別しやすいように「貢献度」と呼ぶことにします)やCPAなどが表示されています.

 

図1.モデル比較ツールのレポート(終点モデルのみ)

 

「終点」というアイコンの右横に「vs モデルを選択」と書かれています(図1の青色の枠を参照).ここをクリックして,「起点」を選んでみましょう(図2参照).すると「起点モデル」と呼ばれるアトリビューションモデルが追加され,表にそのモデルのデータが追加されます(図3参照).この「モデル選択」は最大3つまで行えます.3つめに「線形」を選んだ場合が,図4です.

 

図2.モデル選択で他のモデルを選ぶ

 

図3.モデル比較ツール(終点モデルと起点モデル)

 

図4.モデル比較ツール(終点モデルと起点モデルと線形モデル)

 

 

その1で紹介しましたが,アトリビューションモデルとは,各コンバージョン経路上の各接点にどのように貢献度を分配するかを決めたルールに沿って各媒体の貢献度を計算するモデルのことです.

図4では,終点モデル(図4の赤色の枠)と起点モデル(図4の青色の枠)と線形モデル(図4の黄緑色の枠)でのそれぞれの貢献度が計算され,さらに終点モデルのコンバージョン数対する起点モデルと線形モデルのコンバージョン数の変化率が右の列に計算されています(図4の紫色の枠.機能としては,一番左に選んだモデルに対するその他のモデルの変化率が表示されます.デフォルトや図4では最初に選んだ,つまり一番左のモデルが終点モデルなので,それに対する変化率となっています).

ちなみに,例えば図4においてチャネル「有料検索」の終点モデルに対する起点モデルのコンバージョンの変化率は「-50%」と表示されていますが,

((起点モデルのコンバージョン数)-(終点モデルのコンバージョン数))÷ (終点モデルのコンバージョン数)×100 = (4-8)÷8×100 = -50%

という計算です.

 

2.モデル比較ツールのコンバージョン数

「モデル比較ツール」のレポートを理解するには,アトリビューションモデルの理解が必要です.デフォルトにある各モデルがどのようなものかは次の3節に示しました.ここでは,この「モデル比較ツール」のレポートと[コンバージョン > マルチチャネル > アシスト コンバージョン]のレポートの違いを確認しておきたいと思います.

その2で書いたように,[コンバージョン > マルチチャネル > アシスト コンバージョン]のレポート群は,コンバージョン(ラストコンバージョン)とアシストコンバージョンが違う指標になっています.そのため,アシストコンバージョンの数値の総和がコンバージョンの数値の総和よりも多くなる場合があり得ますし,総合的な判断をしたい場合に不便です.

一方で,図4の「モデル比較ツール」のレポートを見ると,「終点モデル」と「起点モデル」と「線形モデル」の各コンバージョン数(貢献度)の合計が全て同じです(図4のコンバージョン数の合計は「66」となっています.なお場合によっては,四捨五入で多少の誤差は生じます).

つまり,コンバージョン経路にてアシストの役割をしている接点のアシストの役割をコンバージョンそのものに反映させてコンバージョン数(貢献度)を計算しているので,コンバージョン数の合計は(集計期間や対象となる目標等が同じならば)すべてのモデルで等しくなります.これによって,各モデルの比較が容易になります.

さらに,「モデル比較ツール」のレポートのコンバージョン数は1つの指標なので,「アシスト コンバージョン」のレポート群とは違い,総合的な判断も容易になります

 

3Google Analyticsのデフォルトのアトリビューションモデル

Google Analyticsには,終点モデル,最後の間接クリックモデル,AdWords広告のラストクリックモデル,起点モデル,線形モデル,減衰モデル,接点モデルの7つがデフォルトで用意されています.また自分でモデルを作成することも出来ます.

以下では,各モデルの「モデルの説明」や「このモデルの使用方法」は,最後に記載している参考文献などからほぼそのまま引用しています.ただし,それだけでは物足りもと感じたものは補足説明を書いています.具体的な例があると各モデルが理解しやすくなります.そこで,Google Analyticsの[コンバージョン > マルチチャネル > コンバージョン経路]から,図5のようなコンバージョン経路で,コンバージョンが合計で「1」あった場合を具体例として考えることにします.なお,図5のコンバージョン経路のデータは,チャネルグループをカスタマイズしたものを使って取得しています(したがって,「Google自然検索」や「Google有料検索」や「メルマガ」などのチャネルの接点が存在しています).

 

図5.コンバージョン経路「Google自然検索 > Google有料検索 > ノーリファラー > メルマガ > ノーリファラー」

 

図5のコンバージョン経路には接点が5つ存在し,起点がチャネル「Google自然検索」,終点がチャネル「ノーリファラー」となっています.経路の見方や用語は,その1その2などを見てください.

 

終点モデル

モデルの説明:最後の接点に,コンバージョンの価値がすべて起因すると見なす.図5の例では,「ノーリファラー」のチャネルに貢献度がすべて割り振られる.

このモデルの使用方法:広告とキャンペーンが購入段階の顧客にアピールするように作成されている場合,またはビジネスが想定する販売サイクルに検討段階が含まれていない場合は,終点モデルが有効な可能性がある.

 

最後の間接クリックモデル

モデルの説明:ノーリファラーは無視され,顧客が購入やコンバージョンに至る前に最後に使った(クリック)したチャネルにコンバージョンの価値がすべて起因するものと見なす.Google Analyticsの参照元の扱い方の規則から,Google Analyticsのコンバージョンカテゴリー以外(トラフィック系)のレポートでコンバージョン数を割り振る際には,このモデルがデフォルトで使用される.図5の例では,「メルマガ」のチャネルに貢献度がすべて割り振られる.

補足説明:例えば,コンバージョン経路に「メルマガ」のチャネルの1種類の接点しかない(接点の数は複数でもよいがその種類が1つのみの)場合,この「メルマガ」のチャネルは終点であると同時に最後の間接クリックでもあるので,最後の間接クリックモデルではこの経路の「メルマガ」を最後の間接クリックしたチャネルと判断し,「メルマガ」のチャネルに(最後の間接クリックの)コンバージョン(貢献度)が与えられる.一方で,コンバージョン経路に「ノーリファラー」のチャネルのみの接点しかない(1つでも複数でもかまわないが「ノーリファラー」しかない)場合,最後の間接クリックモデルではこの経路の「ノーリファラー」を最後の間接クリックしたチャネルと判断し,「ノーリファラー」のチャネルにコンバージョンスコア(貢献度)が与えられる.

このモデルの使用方法:このモデルはGoogle Analyticsのトラフィック系のレポートで使用するデフォルトモデルであるため,他のモデルの結果を評価する際の比較対象モデルとして利用できる.

 

AdWords広告のラストクリックモデル

モデルの説明:顧客がコンバージョンに至る前,最後にクリックしたAdWords広告に,コンバージョンの価値がすべて起因すると見なす.つまり,図5の例では直接アクセスの「Google有料検索」のチャネルに貢献度がすべて割り振られる.

補足説明:コンバージョン経路にAdWords広告の接点が存在しない場合,その経路の終点のチャネルにAdWords広告のラストクリックのコンバージョン(貢献度)が与えられる.したがって,終点モデルの各(AdWords広告に関係しない)チャネルのコンバージョン数から,AdWords広告が含まれていない経路分だけコンバージョン数を引いたものが,このモデルでの各チャネルのAdWords広告のラストクリックのコンバージョン数となる.

このモデルの使用方法:最も多くのコンバージョン成立に繋がったAdWords広告を特定してその後の運用に反映するのに,AdWords広告のラストクリックモデルを使用する.

 

起点モデル

モデルの説明:顧客が最初に利用したチャネルに,コンバージョンの価値がすべて起因すると見なす.つまり,最初の接点(図5の例では直接アクセスの「Google自然検索」のチャネル)に貢献度がすべて割り振られる.

このモデルの使用方法:このモデルは,初期のブランド認知を目的に広告やキャンペーンを掲載している場合に薦められる.例えば,ブランド名が世間に浸透していない場合は,顧客に初めてブランドをアピールするキーワードやチャネルが重要となる.

 

線形モデル

モデルの説明:コンバージョン成立までに発生したすべての接点が,均等にコンバージョンに貢献したものと見なす.つまり,コンバージョン経路の各接点(図5の例ではGoogle自然検索,Google有料検索,ノーリファラー,メルマガ)に販売の予算枠の均等に割り振られる.割合でコンバージョンを分けるので,コンバージョンスコア(貢献度)が整数でなく実数として扱われる.

補足説明:図5のようなコンバージョン経路上に5つの接点があり,ノーリファラーが2回経路上に接点として存在する場合,“接点に均等”なので「Google自然検索」に20%,「Google 有料検索」に20%,「メルマガ」に20%,「ノーリファラー」に40%というふうに割り振られる.

このモデルの使用方法:キャンペーンを運用する目的が,販売サイクル全体を通じて顧客との接触を維持し認知度を高める場合に,検討段階のすべての接点が等しく重要となるので使用されるモデル.

 

減衰モデル

モデルの説明:このモデルは,コンバージョン達成に最も近い段階で生じた接点が,最もコンバージョンに貢献したものと見なす.つまり,コンバージョンに時間的に最も近い接点に最大の貢献度が割り当てられる.各接点がコンバージョンかどれから時間的に離れているかで,コンバージョンの貢献度がどれぐらいあるかを判定し各接点の貢献度をコンバージョンに件数の何割分かを決定して割り振る.そのため,コンバージョンスコアは実数となる.

補足説明:例えば図5の経路において,Google自然検索で流入の1週間後にGoogle有料検索で流入し同日の2時間後にノーリファラーで流入し,その2日後にメルマガで流入し同日の1時間後にノーリファラーで流入してコンバージョンに至ったとする.この場合,顧客がコンバージョンに至る数時間以内のノーリファラーとメルマガのチャネルに,最大の予算が割り当てられる.Google有料検索のチャネルに割り振られる予算は,ノーファラーとメルマガに比べ少なくなる.また,Google自然検索経由の流入は1週間前なので,このチャネルにはほとんど予算枠は割り当てられない(デフォルトの減衰モデルは,減衰の半減期が7日に設定されているようである).「コンバージョン獲得日から計算してこの日数前(つまりデフォルトとでは7日前)に行われたアシストクリックに対し,クリックの半分(1/2)の予算枠がコンバージョン獲得日に割り当てられる」というルールのようであるが,完全な計算ロジックは確認出来ていない.

このモデルの使用方法:このモデルは,販売サイクルが短い場合に薦められる.1日か2日のプロモーションキャンペーンを展開する場合は,プロモーション当日の接点により多くの予算枠を割り振りする. このケースでは,コンバージョン直前の接点に比べて,1週間前の接点にはほとんど価値がない.減衰モデルでは,コンバージョンに至る1~2日間の接点に対し,適切に予算を割り振ることが出来る.

 

接点ベースモデル

モデルの説明:終点モデルと起点モデルのハイブリットモデル.起点か終点のいずれかにすべての予算を割り振るのではなく,各接点に予算枠を配分する.例えば,起点と終点に貢献度を40%ずつ割り振り,途中の接点に貢献度を20%を割り振る(デフォルトの接点ベースの予算の割り振りがこのような設定になっている).割り振り方からコンバージョンスコアは,基本的に実数となる.

補足説明:図5の例では,起点の「Google自然検索」のチャネルに貢献度の40%を与え,途中の接点の「Google有料検索」と「メルマガ」に貢献度の20/3 = 6.66…%を与え,途中の接点と終点でもある「ノーリファラー」のチャネルに貢献度の46.66%が割り振られる.

このモデルの使用方法:顧客にブランドを認知させた最初の接点と,販売に繋がった最後の接点を最も重視する場合は,接点ベースモデルを使用する.

 

4.おわりに

以上で,Google Analyticsのアトリビューション機能の紹介は終わりです.ただ実際に,Google Analyticsのこのようなアトリビューション機能を使おうとすると,いくつかの問題点や不便なことに気づきます.

まず,デフォルトのチャネルグループはおおざっぱすます.例えば検索は自然検索と有料検索は分かれていますが,YahooからかGoogleからかそれ以外かなのかなどは分別されていません.したがって,自分でサイトにあったチャネルグループを作る必要があります(これはなれたりわかっているいる人にはそれほど難しくないですが,初心者にはすくなくとも簡単ではないです).

次に,チャネルグループをカスタマイズしたとしてもコンバージョン経路上にノーリファラーに分類される接点が多すぎることにすぐ気づくと思います.その結果,分析してもノーリファラーにばかり貢献度が振り分けられるものになったりします.これは,デフォルト機能で計算させる限りどうしようもないと思われます.

そして,独自のモデルを作ることができる機能も備わっているのですが,それほど高度なことはできませんし,上述したようにノーリファラーが多すぎる問題はそもそも解決しないので使い勝手はよくありません.

ノーリファラーに貢献度が偏ってしまうのを防ぐには,コンバージョン経路のデータを出力して,まずノーリファラーをなるべく減らすようにデータを加工し,その加工したデータを利用してアトリビューション分析を(外部のプログラムで)するという方法があります.このことに関しても機会があればいずれ書きたいと思います.

 

参考文献

[1] 田中弦,佐藤康夫,杉本剛,有園雄一.(2012) “アトリビューション 広告効果の考え方を根底から覆す新手法”,インプレスジャパン.

[2] “Google アナリティクスヘルプ アトリビューション分析”

https://support.google.com/analytics/topic/3205717?hl=ja&ref_topic=1631741

[3] “Googleアナリティクスとは/衣袋教授のGoogleアナリティクス入門講座”

http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2014/03/20/17175

[4] “アトリビューションについての総合情報サイト|Attribution.jp”

http://www.attribution.jp/

 

<この記事は「デジマのあれこれ」にて2017年1月頃公開された記事を一部改良して移植したものです>