その1に引き続き,アトリビューション分析を考えたいと思います.使うデータというかアクセス解析ソフトはGoogle Analyticsです.Google Analyticsのアトリビューション機能と注意点を紹介します.今回は,Google Analyticsの[コンバージョン > マルチチャネル]内の機能の話が中心です.
目次
1.Google Analyticsは項目(レポート)によって参照元の定義が異なる
Google Analyticsの[コンバージョン > マルチチャネル]や[コンバージョン > アトリビューション]の項目が,アトリビューション分析の機能に該当します.これら項目(レポート)は,コンバージョンに至った訪問者のデータしか収集されませんので注意してください.また,“参照元”の定義がGoogle Analyticsの「集客」や「行動」の項目のトラフィック系レポートとは異なっています.Google Analyticsの「集客」や「行動」のトラフィック系レポートの参照元参照元は特殊な定義があるので注意してください.それに関しては以下のサイトが参考になります.
衣袋教授の新・Googleアナリティクス入門講座
Googleアナリティクスの「参照元」は過去にさかのぼる。GA独自の定義を正しく理解する[第25回]
http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2016/12/15/24591
「Googleアナリティクスとは/衣袋教授のGoogleアナリティクス入門講座“じつは特殊なGoogleアナリティクスの「参照元」”
Google Analyticsの[コンバージョン > マルチチャネル]や[コンバージョン > アトリビューション]の項目では,前回の参照元履歴があってもダイレクトトラフィックはノーリファラーとして集計される一般的な感覚の“参照元”となります.
2.コンバージョン経路と用語
話を進める上で必要な基本的な用語のいくつかを以下取りあげておきます.その1のコラムで説明したコンバージョン経路ですが,コンバージョン経路内のそれぞれの流入元を「接点」と呼びます.接点は果たす役割から終点・アシスト・起点と呼ばれるものに分類できます.以下が,その説明です(図1も参照).
- 終点(ラストクリック):コンバージョンをした訪問の流入元のこと(コンバージョン至った流入のの参照元).
- アシスト:終点以外の,起点および中間の流入元の集合(コンバージョン経路上の終点を除いた流入元).つまり,2回以上の訪問でコンバージョンした場合は,終点以外の訪問がすべてアシストに該当する.
- 起点(ファーストクリック):初回訪問の流入元のこと(コンバージョン経路上の最初の流入元.アシストの一種).
コンバージョン経路は,コンバージョンをした訪問者がコンバージョンまでにどのようなチャネルを経由してきたかを表す経路で示されることが多いですが,キャンペーンやキーワードなどの経路としてもそのデータを取得することも出来ます.ただし,Google Analyticsではチャネルでの情報とキャンペーンやキーワードでの情報を一緒には表示出来ません.
アトリビューション分析においてコンバージョン経路でのアシストとは,終点以外のすべての接点のことを指します.直前のものだけではないことに注意してください.
例えば,初回の訪問が「有料検索」のチャネルの流入し,2回目の訪問が「自然検索」のチャネルの流入し,3回目の訪問が「ディスプレイ」のチャネルの流入し,4回目の訪問が「ノーリファラー」のチャネルの流入してそのままコンバージョンに至った場合を考えると,コンバージョン経路は,
「有料検索 > 自然検索 > ディスプレー > ノーリファラー」
などのように表記されます.この場合,起点は「有料検索」で,アシストは「有料検索」と「自然検索」と「ディスプレイ」で,終点が「ノーリファラー」に該当します.
3.Google Analyticsのアシストコンバージョンとコンバージョン経路のレポート
Google Analyticsの[コンバージョン > マルチチャネル]の機能は貢献度を再配分するため基礎的な情報はありますが再配分を行う機能はありません.マーケティングのアトリビューションは「貢献度を再配分する」ということかすると,[コンバージョン > マルチチャネル]の機能は正確にはアトリビューションの機能ではないのかもしれませんが,アトリビューション分析に関して重要な情報を得られることには変わりは無いと思います.
Google Analyticsの[コンバージョン > マルチチャネル > アシスト コンバージョン]のレポートでは,アシストであるような接点に関するレポートが表示され,各チャネル(選択によっては参照元などのその他のディメンションで)の「アシストコンバージョン」の値が確認出来ます(図2参照).
なお,[コンバージョン > マルチチャネル > アシスト コンバージョン]を選択したときその表示は図2のような「アシスト接点の分析」のレポートとなっていますが,エクスプローラでさらに図3のような「起点の分析」のレポートと図4のような「コンバージョン」のレポートを選択出来ます.
図5は,図2~3と同じ条件(期間・コンバージョン・タイプ・ルックバックウィンドウズ等が同じ)の「コンバージョン経路」のレポートです.[コンバージョン > マルチチャネル > コンバージョン経路]を選択することで表示出来ます.
図5からコンバージョン経路は全部で7種類(図5の①の青色の枠参照)あり,1~4番目の経路の接点数は1で,5番目の経路の接点数は2(図では②の橙色の枠の内部のように「ノーリファラー×2」と表記されていますが,これは「ノーリファラー > ノーリファラー」という経路を表しています)で,6番目の経路の接点数は4(「参照サイト > ディスプレイ > ノーリファラー > ノーリファラー」)で,7番目の経路の接点数は10となっています.
このことは,経路の数のレポート(図6参照)でも確認出来ます.図5の1番目の経路の終点は「ディスプレイ」,2番目と5番目と6番目の経路の終点は「ノーリファラー」,3番目と7番目の経路の終点は「参照元サイト」,4番目の経路の終点は「有料検索」となっています.さらに,1番目の経路でコンバージョンに至った場合が4件(図5の③の紫色の枠参照),2番目の経路でコンバージョンに至った場合が2件,・・・とわかります.
図2のアシスト接点の分析のレポート内の「ラストクリックまたは直接のコンバージョン」がいわゆるラストコンバージョン(コンバージョンの直前にクリックされたチャネルに計上されたコンバージョン数)です.図5でカウント出来る各チャネルの終点の合計数とこのラストコンバージョンの数が対応しているのが確認出来ると思います.
ラストクリックまたは直接のコンバージョンとアシストコンバージョンとを比べることで,該当するチャネルがアシスト型か終点型かを評価することが出来ます.つまり,「アシストコンバージョン/ラストクリックまたは直接のコンバージョン(=アシストコンバージョン÷ラストコンバージョン)」の値が1より大きいと,そのチャネルはラストクリックになるよりもアシストとしての貢献度が高い判断できます.
4.Google Analyticsのアシストコンバージョンでの注意点
アシストコンバージョンのデータを見る場合に特に注意すべき点があます.
まず1つめとして,アシストコンバージョンはチャネル間で相互に排他的ではありません.つまり,1つのコンバージョン経路でアシストしたチャネルが2種類以上ある場合は,それぞれのチャネルにアシストコンバージョンがカウントされるため,アシストコンバージョンの件数の合計が全体のチャネルのアシストコンバージョンの件数よりも大きくなる場合がありえます.
2つめとして,アシストとはコンバージョン経路上の終点以外の接点のチャネル(流入元)のことを指しますが,Google AnalyticsではあるチャネルXがコンバージョン経路Y(この経路のコンバージョン数は「1」とする)上で複数回アシストとして登場しても,コンバージョン経路Yに関するチャネルXのアシストコンバージョンは「1」とカウントされます(コンバージョン経路Yのコンバージョン数が「N」あるならば,チャネルXのアシストコンバージョンは「N」となります).このことを以下で詳しく説明します.
図2の①の箇所(紫色の枠)を見ると,チャネル「ディスプレイ」と「ノーリファラー」と「参照サイト」のアシストコンバージョンは「2」,有料検索のアシストコンバージョンは「―(無し)」となっています.
図5のコンバージョン経路を見てください.例えば,チャネル「ディスプレイ」は1番目と6番目と7番目の経路上にあります.1番目の経路はチャネル「ディスプレイ」だけなので,アシストコンバージョンはカウントされません.6番目のコンバージョン経路「参照サイト > ディスプレイ > ノーリファラー > ノーリファラー」には「ディスプレイ」が1回登場し,その位置からこの経路でチャネル「ディスプレイ」にアシストコンバージョンがカウントされます.次に,7番目のコンバージョン経路「参照サイト > 参照サイト > 参照サイト > ディスプレイ > ディスプレイ > 参照サイト > 参照サイト > ディスプレイ > ディスプレイ > 参照サイト」では,「ディスプレイ」が全部で4回登場し,その位置からこの経路でチャネル「ディスプレイ」にアシストコンバージョンがカウントされます.
以上から,図5の7種類のコンバージョン経路上にアシストに分類できる接点の「ディスプレイ」は全部で5個ありますが,図2の「ディスプレイ」のアシストコンバージョンは「2」です.つまり,7番目のコンバージョン経路での「ディスプレイ」のアシストコンバージョンは「1」とカウントされているのです(6番目と7番目のコンバージョン経路それそれで「ディスプレイ」のアシストコンバージョンが「1」として集計されているのです).結果として,チャネル「ディスプレイ」の合計のアシストコンバージョンは,
(6番目のコンバージョン経路のアシストコンバージョン)×(6番目のコンバージョン経路のコンバージョン数)+(7番目のコンバージョン経路のアシストコンバージョン)×(7番目のコンバージョン経路のコンバージョン数)= 1×1+1×1 = 2
とカウントされているのです(図2の②の橙色の枠を参照).
このGoogle Analyticsのアシストコンバージョンのカウント方法の情報は,あまり見かけないと思っています(コンバージョン経路上にある分だけアシストコンバージョンとしてカウントされていると勘違いしているような記載は見かけます).
また,図2の③の箇所(青色の枠)でアシストコンバージョンが「3」と表記されていますが,これは全体でアシストコンバージョンがどれぐらいあるかを示しています.図5のコンバージョン経路をみると,5番目と6番目と7番目の経路だけにアシストであるような接点が存在します.これら5番目と6番目と7番目の経路のコンバージョン数の合計は「3」です.したがって,12件のコンバージョンのうち3件がアシストコンバージョンを持っているということです.この値が図2の③に表記されています.
5.まとめ
以上のような注意点を踏めた上で,あるチャネルにアシストの貢献度が有るのか無いのか知りたい場合や,貢献度の大きさをざっくり知りたい場合には,[コンバージョン > マルチチャネル > アシスト コンバージョン]のレポート群の情報は役にたちます.しかし,コンバージョン(ラストコンバージョン)とアシストコンバージョンが違う指標になってしまっているために,総合的な判断をするための資料としては不便を感じます.このような問題を解決するのが,[コンバージョン > アトリビューション]の機能と言えます.これはその3にて紹介します.
<この記事は「デジマのあれこれ」にて2016年12月頃公開された記事を一部改良して移植したものです>