Google Analytics 4では,広告ブロックのアドオンを使っているブラウザを用いたアクセスを計測できていないことがあります.Google Analytics 4で計測できているアクセスは実際のアクセスの何割ぐらいなのかを,実測値も使いながら調査・考察しました.
目次
1.はじめに
皆さんはWebブラウザにどんなアドオンを追加しているでしょうか?私はここ数年,(既定)ブラウザに広告ブロック(アドブロック)のアドオンを必ず入れるようにしています.ただし,私は用途によってブラウザを使い分けているので,あえて広告ブロックのアドオンを入れていないブラウザ,もしくはインストールしていても通常はオフにしているブラウザもあります.
Webサービス,とくに無料のものの多くは広告で成り立てっていることは知っていますが,近年の広告の酷さには呆れる面(世界的プラットフォーマーが詐欺広告などを無責任に流して,開き直っている態度などを目にすること)も多々あり,精神衛生を保つ意味でも自分にとって広告ブロックは必要だと感じています.
本サイトはおよそ5年前の2020年9月に,下記の記事で広告ブロックのアドオンを入れたブラウザを使うとGoogle Analyticsで計測不可になることを紹介していました.
広告ブロック(アドブロック)でGoogle Analyticsが計測不可になる現象
この記事内のGoogle Analyticsとはユニバーサルアナリティクスのことですが,Google Analytics 4(以下GA4)でも広告ブロックのアドオンの設定によっては同様に計測不可になります.
ちなみに私の既定ブラウザの広告ブロックアドオンでは,AdbolckPlusの設定の「トラッキングの追加ブロック」を有効にしているので,GA4等のトラッキングを拒否する設定にしています(図1参照).

図1.AdbolckPlusの設定画面.
JavaScriptで生成されたサードパーティクッキーを利用した通常設定のGA4などのアクセス解析ソフトでは,広告ブロックのアドオンを使っているブラウザのアクセスを計測できていないことがあるのです*.
通常設定のGA4等で計測されないアクセスの割合は現在どれぐらいなのかと気になりましたので,実際に計測したデータなども使って調査・考察してみました.
<「*」部分の補足>
- 現在は「Brave」などのようにブラウザのデフォルト機能としてアドブロックが含まれているものもありますが,それらブラウザを使ったアクセスも同様にGA4などのアクセス解析ソフトで計測できないと思われます.
- 通常設定でないGA4とは,サーバーサイドGTM(Google アナリティクス 4 データ ストリーム)を利用した場合などです.サーバーサイドGTMの設定は扱ったことが無いので,広告ブロックが有効なアクセスに対してGA4の計測が実際にどのようになるかを確認したことがありません.ですが,その設定(トラッキングがクッキーに依存しないファーストパーティのユーザーデータを利用すること)から,広告ブロックが有効であってもGA4の計測ができると推測しています.
- 多くの場合,自社サイトのアクセスデータにおける関係者のアクセスは除外したいと考えます.広告ブロックのアドオンを使うことでサードパーティクッキーを利用したアクセス解析ソフトの計測を無効にできることを利用する(関係者の業務用のPCやスマホのブラウザに広告ブロックアドオンをインストールさせる)ことで,関係者のアクセスデータを除外するのに利用できます.
2.検索結果と生成AIの回答を確認
まずは,広告ブロックが現在どれぐらい使われているかを知りたいと思います.
Google検索で「広告ブロックのアドオンを使っているブラウザの割合」と検索すると,「AIによる概要」で以下のような結果(図2も参照)が表示されました.
<Google検索の「AIによる概要」の結果>
広告ブロックアドオンを使用しているブラウザの割合は、世界全体で約37%から42.7%程度とされています。特に、ギリシャや台湾では高い水準を維持しており、日本は比較的低い水準にあるとされています。
詳細な内訳としては、以下の点が挙げられます。世界全体:
2022年の調査では、インターネットユーザーの42.7%が広告ブロックソフトウェアを頻繁に使用していると報告されています。また、別の調査では、16歳から64歳のインターネットユーザーの37%以上が広告ブロッカーを使用しているとされています。
国別の比較:
日本は広告ブロッカーの使用率が比較的低く、約22.3%程度とされています。
ブラウザの普及状況:
最新のブラウザには、広告ブロック機能を最初から搭載しているものも増えています。広告ブロックアドオンの利用状況は、国や地域、年齢層、ブラウザによって異なるため、一概に割合を特定することは難しいですが、世界的に見ると一定の割合で利用されていることがわかります
以上の結果を信じると,日本での広告ブロックアドオンを利用している割合は約22%のようです.ただし,この割合の値は,「AIによる概要」のソースやその他の検索結果などを見ると,2022年から2023年頃のようです.
ChatGPTのDeep Researchを使って同様に調べてみました.
<ChatGPTのDeep Researchの回答>
広告ブロックアドオンの利用状況(世界 vs 日本)
世界全体では、インターネット利用者の約31.5%が何らかの形で広告ブロックツールを使用しており、そのユーザー数は約9.12億人(デスクトップ:4.16億人、モバイル:4.96億人)と推計されています。StatCounterによれば、2025年6月時点の世界のインターネット利用はおよそ36%がPC、64%がモバイルで占められているため、これらの推計値から逆算するとPCブラウザでの広告ブロック利用率は約21%、モバイルでは約14%程度と見積もることができます。これに対し、日本ではインターネット利用者の約15~16%が広告ブロックツールを使用しているとされ、とくにPCでの利用が大多数(90%以上)を占めると報告されています。したがって日本では、PCブラウザでの広告ブロック利用率は約15%前後、モバイルでは数%程度にとどまると推定されます。以下の表に、世界と日本それぞれのPC・モバイル・全体(PC+モバイル)の広告ブロック利用率の概算値をまとめました。
(以下略.図3と4参照)
ChatGPTの回答だと,日本での全体(PC+モバイル)の広告ブロック利用率は15~16%ということで,Googleの検索結果(AIによる概要)よりけっこう低く出ました.
ちゃんとした調査をするならば,Googleの検索結果とChatGPTの回答のソースも含めて検証をすべきですが,本記事で考えている独自の調査・検証もふくめてそこまでの精度があるものを想定していません(求めていませんし,実際にできません).したがって,以上の結果を踏まえて,2025年現在の日本での広告ブロック利用率は15~25%ぐらいではないかと考えることにしました(広告ブロックを使う人の割合は増加傾向にあるので,Googleの結果を踏まえると25%弱ぐらいになっている可能性もあると考えました).
ともかく,広告ブロックを使っている割合が15~25%だと考えると,「GA4の通常計測では実際のアクセスの75~85%しか計測できていない可能性」があると考えることができます.
3.実測のSearch ConsoleとGA4のGoogle自然検索の割合
「GA4の通常計測では実際のアクセスの75~85%しか計測できていない可能性」を,実測値をつかって検証・考察してみたいと思います.
使うデータは本サイトのものです.また,使うデータの期間は,2025年4月1日~2025年6月30日までの3ヶ月とします.
データが豊富ならば,デバイスの種類(つまり,アクセスで使われたデバイスがデスクトップかモバイルか)や使っているブラウザの種類はなにかも検討した方いいとは思います.ですが,本サイト程度のアクセス規模ではそれらまで考慮するのはちょっと厳しいと思います(またすべてでそれらのデータが取得できてもいません).ですから,デバイスやブラウザの種類は区別しないことにします.
ちなみに,本サイトのGA4での計測での2025年4月1日~2025年6月30日のデバイスやブラウザの種類の割合は図5のようになっていました(約9割がデスクトップでアクセスして,約8割がChromeでアクセスしていました).

図5.デバイスやブラウザの種類の割合.
まず,Google Search ConsoleとGA4のデータを使って比べます.つまり,広告ブロックが影響しないSearch Consoleのデータと広告ブロックが影響するGA4で計測したGoogleの自然検索での流入のデータにどれほどの差があるかを調べてみます.
ただし,Search ConsoleのデータはGoogleによってプライバシーに配慮されていることや,Search Consoleのタイムゾーン(日本時間でGA4を遣っている場合は日付が一致しないこと)など本当はちゃんと考慮しなければならないこともあります.ですが,それを行う作業量やこちらでは対応できない面もあるので,それらは無視することにします.なお,Search Consoleのタイムゾーンに関しては以下の記事を参照してください.
Google AnalyticsとSearch Consoleのタイムゾーンを認識してデータポータルを活用する
まず,2025年4月1日~2025年6月30日までの3ヶ月の本サイトでアクセスが多かったトップ3の記事(それを「A, B, C」とします)それぞれに関して,Search Consoleでのクリックス数の値X(A), X(B), X(C)を求めます(つまり,X(A)とは記事Aのページに関するSearch Consoleでのクリック数です.図6参照).次に,GA4の「ランディング ページ」のレポート(図7参照)で,記事A, B, Cのページに関して「セッションの参照元/メディア」が「google / organic」に該当するセッションの値Y(A), Y(B), Y(C)を求めます(つまり,Y(A)とは記事Aのページがランディングページでかつ「セッションの参照元/メディア」が「google / organic」であるセッションの数です).

図6.Search Consoleでのページごとのクリック数.

図7.GA4の「ランディング ページ」のレポート.
そして,Y(A)÷X(A)とY(B)÷X(B)とY(C)÷X(C)を求めます.広告ブロックの影響が生成AIの回答通りに本サイトで計測されているならば,広告ブロックの影響を受けないXの値に対して広告ブロックの影響を受けるYの値は,0.75~0.85(75%~85%)倍の値になっている,つまりY÷X = 0.75~0.85となると思われます.以下が,実際の結果です.
- Y(A)÷X(A) = 0.98
- Y(B)÷X(B) = 1.11
- Y(C)÷X(C) = 0.99
結果は差がないどころか,GA4での値の方が上回っているものもありました.これはGA4の「セッションの参照元/メディア」がどう記録・計測されているかの影響ではないかと考えました(例えば下記を参照).
GA4「セッションの参照元 / メディア」と「参照元 / メディア」の違い
https://and-aaa.com/report/ga4-source-medium
『「セッションの参照元 / メディア」は、セッション単位で割り当てられ、セッションの起点を表します。直接の訪問、すなわち、direct / (none) で開始されたセッションは、そのユーザーの最後に確認された「参照元 / メディア」に関連付けられます』
つまり,あるユーザーがGoogleの自然検索から最初にアクセスしたセッションの後でブックマークや履歴などを使った違うセッションでアクセスしたものが含まれているため,Yの値が実際のGoogleの自然検索からの直接の流入より多くなったと考えました.
そこで,GA4の「ランディング ページ」のレポート(図7参照)で記事A, B, Cのページに関して「セッションの参照元/メディア」が「google / organic」に該当するアクティブユーザーの値Z(A), Z(B), Z(C)を求め(つまり,Z(A)とはランディングページが記事Aのページでかつ「セッションの参照元/メディア」が「google / organic」であるアクティブユーザーの数),広告ブロックの影響を受けないXの値に対して広告ブロックの影響を受けるZの値を比べてみました.
- Z(A)÷X(A) = 0.84
- Z(B)÷X(B) = 0.89
- Z(C)÷X(C) = 0.88
上記に示すように,広告ブロックの影響を受けないXの値に対して広告ブロックの影響を受けるZの値は,0.84~0.89倍(84~89%)の値でした.
この結果ならば,「GA4の通常計測では実際のアクセスの75~85%しか計測できていない可能性」が本サイトの計測でも確認できたとみなしていいかもしれません(Search Consoleの仕様で無視している影響や,広告ブロックアドオンは設定によってはGA4でも計測できるので広告ブロックを使っている割合からさらに少ない割合がGA4で計測不可になっていると考えれば,「84~89%」はありえる数値だと考えていいのではないでしょうか).
ただし上記の考察は,「本サイトの値でも当てはまっている」と言えるような方向に強引に導いたと感じる人も多いかもしれません(笑).
4.実測のWordPressプラグインの計測とGA4のページビュー数の割合
3節とは違った実測値を使って,再度調査・検討をしてみたいと思います.
本節でも使うデータは本サイトのもので,使うデータの期間は,2025年4月1日~2025年6月30日までの3ヶ月とします.また,3節と同様にデバイスやブラウザの種類は区別しないことにします.
今度はWordPressプラグイン「WordPress Popular Posts」のアクセス計測(図8参照)とGA4の「ページとスクリーン」のレポート(図9参照)の計測を使います.

図8.WordPressプラグイン「WordPress Popular Posts」のアクセス計測.

図9.GA4の「ページとスクリーン」のレポート.
WordPressプラグイン「WordPress Popular Posts」のアクセス計測による記事A, B, Cのページのそれぞれのビューの値W(A),W(B), W(C)を求め(つまり,W(A)とは記事Aのページに関するWordPress Popular Postsでのビューの数),GA4の「ページとスクリーン」のレポートで記事A, B, Cのページ(「ページパスとスクリーン クラス」)に関する表示回数の値H(A), H(B), H(C)を求めます(つまり,H(A)とは記事Aのページに関するGA4での表示回数).
そして,H(A)÷W(A)とH(B)÷W(B)とH(C)÷W(C)を求めます.WordPressプラグインのアクセス計測のビューの値Wは広告ブロックの影響を受けません.一方で,GA4が広告ブロックの影響を受けるので,広告ブロックで計測が無効になっている場合はGA4の表示回数の値Hはカウントされません.したがって,広告ブロックの影響を受けないWの値に対して広告ブロックの影響を受けるHの値は,0.75~0.85(75~85%)倍の値になっている,つまりH÷W = 0.75~0.85となるのでは期待します.以下が,実際の結果です.
- H(A)÷W(A) = 0.82
- H(B)÷W(B) = 0.88
- H(C)÷W(C) = 0.78
上記に示すように,広告ブロックの影響を受けないWの値に対して広告ブロックの影響を受けるHの値は,0.78~0.88倍(78~88%)の値でした.
WordPressプラグインとGA4の仕様の違いなど無視している影響もいろいろあると思いますが,「GA4の通常計測では実際のアクセスの75~85%しか計測できていない可能性」が本サイトの計測でも確認できたと言えるのではないでしょうか.3節のSearch ConsoleとGA4での考察に比べれば,この考察は強引な感じもすくないと思います.
5.おわりに
本記事はちょっと強引な面がある調査・考察だったと思いますが,それでも「GA4の通常計測では実際のアクセスの75~85%しか計測できていない可能性」はあると感じられたのではないでしょうか.
なお,実測値の「H(C)÷W(C) = 0.78」は広告ブロックの影響を受けない値に対して広告ブロックの影響を受ける値の差が一番大きいですが,この記事Cは本サイトのIPアドレス関連の記事です.このことを踏まえると,IPアドレスを気にしている(アクセスデータに興味がある)ユーザーだからこそ広告ブロックを使っている割合が高いのではとか思ったりもしました.
2節の上記の生成AIの結果をみると,世界に対して日本での広告ブロック利用率は低いことは共通していることがわかります.日本の利用率が世界の利用率に追いつくかはわかりませんが,現状を見る限り広告ブロックを使う人の割合は増加することはあっても減ることはないと思います.